先物オプションのデルタヘッジ戦略

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デルタヘッジとは

デルタヘッジは、デルタの値を用いて、オプションと先物などの現物の2つのポジションでヘッジしながらトレードするというものです。

オプションと先物のデルタの値を等しくさせることをデルタニュートラルと言いますが、デルタニュートラルによってヘッジすることをデルタヘッジになります。

デルタについては以下のページを参照してください。

オプション取引の復習|ギリシャ指標(グリークス)

デルタヘッジのポジション

デルタニュートラルにするには、たとえば、アット・ザ・マネーのプットオプションを2枚買うとデルタは1(0.5×2枚)になります。アット・ザ・マネー付近のプットオプションのデルタは0.5だからです。
そして、先物のデルタの値を等しくさせるために、先物を1枚買います。先物のデルタは常に1になります。

これで、オプションと先物のデルタは両方1になり、デルタニュートラルになります。

日経225オプションと日経225先物ミニを用いたデルタヘッジの場合は、取引単位の違いにより次のようなポジションになります。

  • アット・ザ・マネーのプットオプションを1枚買うとデルタは0.5になります。
  • デルタを1にするには、日経225先物ミニの場合は5枚買います。ミニの買いは1枚あたり0.1だからです。

デルタヘッジの損益

以下のポジションの場合の損益は以下になります。日経225でも理論は同じです。

ポジション

S&P500ミニオプションとS&P500先物ミニの組み合わせです。

  • オプション:プット買い2枚
    • 取引単位:50枚
    • デルタ:0.5
    • ガンマ:0.002
  • 先物:買い1枚
    • 取引単位:50枚

デルタヘッジの損益計算

  • オプション
    • 損益 = 原資産価格の変動 × デルタ × 枚数 × 取引単位
  • 先物
    • 損益 = 原資産価格の変動 × 枚数 × 取引単位

デルタヘッジの損益

*単位は米ドルになります。

変動損益
原資産価格オプション先物合計
-$500$25,000-$25,000$0
-$400$20,000-$20,000$0
-$300$15,000-$15,000$0
-$200$10,000-$10,000$0
-$150$7,500-$7,500$0
-$100$5,000-$5,000$0
$0$0$0$0
$100-$3,850$5,000$1,150
$200-$3,850$10,000$6,150
$300-$3,850$15,000$11,150
$400-$3,850$20,000$16,150
$500-$3,850$25,000$21,150

プットの3,850ドル(77ドル×50倍)で先物のリスクヘッジを行うことにより、先物の利益を確保できます

「完全なヘッジが保たれています」というように見えますよね?

ここに2つの落とし穴があります。

  1. オプションのデルタは固定ではなく、原資産価格によって変動する。これはガンマによって計算できる。
  2. オプションの価格(価値)は本質的価値と時間価値があり、時間価値の計算が含まれていない。タイム・ディケイ(時間の経過)によって1日ごとに減損するオプション価格はセータ(シータ)によって表す。

ガンマとセータ(シータ)についても、以下を参照してください。

オプション取引の復習|ギリシャ指標(グリークス)

ガンマを含めたデルタヘッジの損益

デルタの変動率であるガンマを加えてデルタの変動を考慮した損益計算を行ってみましょう。

ガンマと原資産価格の変動で、オプションのプレミアム価格の変動を計算することができます。

オプションのプレミアム価格の変動 = ガンマ × 原資産価格の変動の二乗 / 2

ガンマ:0.001の場合

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$500$125$12,500-$25,000-$12,500
-$400$80$8,000-$20,000-$12,000
-$300$45$4,500-$15,000-$10,500
-$200$20$2,000-$10,000-$8,000
-$100$5$500-$5,000-$4,500
$0$0$0$0$0
$100-$5-$500$5,000$4,500
$200-$20-$2,000$10,000$8,000
$300-$45-$4,500$15,000$10,500
$400-$80-$7,700$20,000$12,300
$500-$125-$7,700$25,000$17,300

ガンマ:0.002の場合

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$500$250$25,000-$25,000$0
-$400$160$16,000-$20,000-$4,000
-$300$90$9,000-$15,000-$6,000
-$200$40$4,000-$10,000-$6,000
-$100$10$1,000-$5,000-$4,000
$0$0$0$0$0
$100-$10-$1,000$5,000$4,000
$200-$40-$4,000$10,000$6,000
$300-$90-$7,700$15,000$7,300
$400-$160-$7,700$20,000$12,300
$500-$250-$7,700$25,000$17,300

ガンマ:0.003の場合

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$500$375$37,500-$25,000$12,500
-$400$240$24,000-$20,000$4,000
-$300$135$13,500-$15,000-$1,500
-$200$60$6,000-$10,000-$4,000
-$100$15$1,500-$5,000-$3,500
$0$0$0$0$0
$100-$15-$1,500$5,000$3,500
$200-$60-$6,000$10,000$4,000
$300-$135-$7,700$15,000$7,300
$400-$240-$7,700$20,000$12,300
$500-$375-$7,700$25,000$17,300

このように、完全なヘッジを保つことができなくなります。
ガンマの値が小さいほど、ヘッジができず、ガンマの値が大きいと、逆に利益を生むこともできる。

しかし、ガンマが0.002以上になることは少ないのではと思っています。
ガンマは、以下の特性があり、ガンマ0.002という値は、残存期間が1ヶ月強でアット・ザ・マネー付近のオプションから取得した値です。

  • 残存期間が短いと、ガンマは大きくなる。
  • アット・ザ・マネー付近では、最も大きくなる。

というような理由により0.002以上を狙うのは困難かと思います。
インプライド・ボラティリティ(IV)が低くなりガンマが大きくなる可能性はありますが、IVは時の運ですので完全なヘッジとして用いることは困難です。

更に、セータを含めると、日々オプション価格が減損しますので、ヘッジを行うことが困難になります。

デルタヘッジを用いた投資手法

デルタヘッジの特性を理解したところで、投資方法を検討したいと思います。

一般的にはデルタヘッジを利用した投資方法は以下の3つになるかと思います。

  1. エントリー後に放置して、利益が出たら利確する。
  2. デルタニュートラル(デルタの合計が0の状態)を調整する。
    1. エントリー後に、デルタニュートラルを保てるように、ポジションを追加する。
    2. エントリー後に、デルタニュートラルを保てるように、ポジションを追加・または決済する。

1.エントリー後に放置して、利益が出たら利確する

デルタヘッジの特性上、ガンマやセータを考慮すると完全なヘッジができないことがわかりました。
ですので、この手法でリスクを無くすことはできません・

そこで変化球的な私の発想です。

先程の例ではプットオプションの利益が少ないことがヘッジにつながらないことが明白ですので、利益を増やせれれば良いのです。

どうやって利益を増やすか?

簡単で単純です。

オプションの投資量を増やせば良いのです。

ポジション

S&P500ミニオプションとS&P500先物ミニの組み合わせです。
オプションのポジション数を2枚から5枚にしてみました。

  • オプション:プット買い5枚
    • 取引単位:50枚
    • デルタ:0.5
    • ガンマ:0.002
  • 先物:買い1枚
    • 取引単位:50枚

損益

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$500$250$62,500-$25,000$37,500
-$400$160$40,000-$20,000$20,000
-$300$90$22,500-$15,000$7,500
-$210$44$11,025-$10,500$525
-$200$40$10,000-$10,000$0
-$100$10$2,500-$5,000-$2,500
$0$0$0$0$0
$11-$0.12-$30$550$520
$25-$0.63-$156$1,250$1,094
$50-$2.50-$625$2,500$1,875
$100-$10-$2,500$5,000$2,500
$200-$40-$10,000$10,000$0
$300-$90-$19,250$15,000-$4,250
$400-$160-$19,250$20,000$750
$500-$250-$19,250$25,000$5,750

ポイントは、赤いと青いセルです。

トレードの手法は以下の通りです。

  • S&P500が上昇すると見込んで、先物ロングで利益を狙う。
  • 利確は500ドル〜2,500ドルのレンジで任意に決めることができますが、セータを考えると細かく利確した方が良いように思います。
    私は500ドルもしくは1,000ドルあたりにして、原資産価格が0.3%〜0.8%の変動である11ドル〜25ドルで利確するようにします。幅が小さいのでデイトレになる可能性が高いです。
  • S&P500が下落した場合はセータなどを考えるとできるだけ早く手仕舞いしたいので、損益0ドルか500ドルあたりで決済する。
    原資産価格が約200ドルですので、6%ほど大幅に下がらないと駄目なのがリスキーです。

いかがでしょうか?

オプションを10枚や15枚に増やすことによって、S&P500が下落した場合のリスクを減らすことが可能です。
損益分岐点(損益が0ドル)の原資産価格です。

  • 10枚:-100ドル(-3%)
  • 15枚:-66.67ドル(-2%)
  • 20枚:-50ドル(-1.5%)
  • 25枚:-40ドル(-1.2%)*原資産価格の変動20ドルで500ドルの利益。
  • 30枚:-33.34ドル(-1%)*500ドルの利益を出せない。

オプションの枚数が多いと約定しないことがあるので、IB証券では、ミニではなく5倍(取引単位250枚)のシンボルSPXを利用した方が良いかも知れません。

コール・オプションと先物売りの組み合わせ

今まで、プット・オプションと先物買いの組み合わせで考えていましたが、逆にした方がゲーム性があって面白いかも知れません。

ポジション

  • オプション:コール買い20枚
    • 取引単位:50枚
    • デルタ:0.5
    • ガンマ:0.002
  • 先物:売り1枚
    • 取引単位:50枚

損益

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$500-$250-$77,000$25,000-$52,000
-$400-$160-$77,000$20,000-$57,000
-$300-$90-$77,000$15,000-$62,000
-$210-$44-$44,100$10,500-$33,600
-$200-$40-$40,000$10,000-$30,000
-$100-$10-$10,000$5,000-$5,000
-$67-$4-$4,445$3,334-$1,111
-$50-$3-$2,500$2,500$0
-$30-$1-$900$1,500$600
$0$0$0$0$0
$30$0.90$900-$1,500-$600
$50$2.50$2,500-$2,500$0
$67$4.49$4,489-$3,350$1,139
$100$10.00$10,000-$5,000$5,000
$200$40.00$40,000-$10,000$30,000
$300$90.00$90,000-$15,000$75,000
$400$160.00$160,000-$20,000$140,000
$500$250.00$250,000-$25,000$225,000

損益分岐点

  • 上昇時:50ドル(50ドル以上が利益)
  • 下落時:50ドル(50ドル以下が利益)

先程までの損益を反転した形になりますが、オプションの枚数を20枚にしています。

トレードの手法は以下の通りです。

  • トレンドが上昇した場合は、1000ドル〜5,000ドルほどで利確する。この時の原資産価格は65ドル〜100ドル(2%〜3%)の上昇になります。1日では難しいかも知れませんが、大きな利益を生むことができます。
  • トレンドが下落した場合は、500ドルほどで利確する。この時の原資産価格は約30ドル(1%)の下落になりますが、早い決着をつけることが可能です。

損益分岐点はどちらも50ドル(1.5%)になっていますので、相場が停滞していなければ早期で決着をつけれそうです。

原資産価格が100ドル以上で利確することにより利益を伸ばすことになりますが、セータによって、利益が損なわれる可能性もあります。
しかし、100ドル利益を伸ばすだけで莫大な利益を掴むことが可能になりますので、ゲーム性があってとてもおもしろいです。
500ドル取れれば、約200,000ドル(2000万円)になりますよ!!でも、15%も動かないので絵に描いた餅ですね。

更に、オプションの枚数を増やすという手段もあります。
オプションを100枚にすると、以下のようになります。

オプションを100枚の場合の損益

変動損益
原資産価格プレミアム価格オプション先物合計
-$50-$3-$12,500$2,500-$10,000
-$10-$0-$500$500$0
-$7-$0-$245$350$105
$0$0$0$0$0
$10$0.10$500-$500$0
$30$0.90$4,500-$1,500$3,000
$50$2.50$12,500-$2,500$10,000
$65$4.23$21,125-$3,250$17,875
$100$10.00$50,000-$5,000$45,000
$150$22.50$112,500-$7,500$105,000

損益分岐点は10ドルになります。
原資産価格が−7ドル下落のときに利確して約100ドルの利益、50ドル上昇で10,000ドル(100万円)の利益、そして、150ドルまで我慢ができれば約100,000ドル(1000万円)の利益になります。

テンションがあがりますね!!

とても面白いのですが、証拠金や手数料の問題がありました。
以下はS&P 500ミニ(ES)の1枚あたりの証拠金や手数料です。

  • オプション
    • 委託証拠金約$7,100($3,300
    • 維持証拠金約$6,400($3,300
    • 手数料$1.22
  • 先物
    • 委託証拠金約$6,800($13,200
    • 維持証拠金約$6,200($12,000
    • 手数料$1.90

100枚ですので、利益の約100ドルは手数料で吹き飛びます。まぁこれは良いです。
そもそも、証拠金が約7,000ドル×100枚=約700,000ドル(約7,000万円)必要になりますので、ちょっと難しいですね。20枚でも約140,000ドル(約1,400万円)必要になりますね。。。

ちょっと手を出せそうにないのですが、妙案です。

S&P500ミニオプション(ES)とS&P500先物ミニ(ES)という組み合わせを、
S&P500ミニオプション(ES)とS&P500先物マイクロミニ(MES)という組み合わせに変更して、ロットを1/10にすれば手が届きそうです。

ポジション

  • S&P500ミニオプション:コール買い10枚
    • 取引単位:50枚
  • S&P500先物マイクロミニ:売り1枚
    • 取引単位:5

これであれば、予算を1/10にできます。利益も1/10になってしまいますが、現実的な投資ができそうです。

もちろん、これでも700万〜1000万くらいは必要になりますので、コールの枚数と利確のバランスを調整すれば、予算を調整することが可能です。たとえばオプションを2枚にすれば更に1/5の予算になります。利益は上記の20枚の1/10になります。100万〜200万で1万〜5万ほどの利益をローリスクであれば悪くないですね。

落とし穴!!
オプションの売りと買い価格のスプレッドで、上記は成り立たないようです。
もちろん、利確の幅を広げれば実現できますが、時間がかかればセータによって苦しむことになりそうです。

2.デルタニュートラルを保てるように、ポジションを調整

ポジション

以下のように先物が1/10の組み合わせでポジションの調整が可能です。カッコ内は取引単位の乗数になります。

  • 日経225オプション(1000)+日経225先物ミニ(100)
  • S&P500ミニオプション(50)+S&P500先物マイクロミニの(5)

次項からは、コールオプションの買い+先物の売りの場合で説明します。

エントリー(トレードの初回)

  1. コールオプションを買う
    • 原資産価格に近い権利行使価格のコールオプションを1枚買う
    • コールオプションのデルタは0.5である。
  2. 先物を売る
    • 先物の売りのデルタは1枚あたり-0.1になりますので、5枚売りデルタを-0.5にする。

コール・オプションのデルタ0.5と先物のデルタ-0.5で合計0になります。
この0の状態をデルタニュートラルといいます。

ポジションの調整(新規と利確)

トレード開始後は、デルタニュートラルを保つためにポジションの調整を行う必要があります。

*コールオプションの買い+先物の売りの場合

1.コールオプションのデルタが0.1増えて、0.6になった場合

  • コールオプション:0.6
  • 先物:−0.5

デルタニュートラルが崩れましたので、先物を1枚追加で売って−0.6にします。

2.コールオプションのデルタが0.1減って、0.5に戻った場合

手法2-2の場合、デルタニュートラルが崩れましたので、先物の1枚を買いで決済します。この場合、利確することになります。

  • コールオプション:0.5
  • 先物:−0.6

手法2-1については決済を行いません。

しかし、このように利確する場合は建玉を個別管理できる必要がありますので、IB証券では実現できません

損益

手法2-1については、相場が一方行であれば利益を出すことができると思いますが、そういう訳には行きません
よって、手法2−2のように調整が必要になってくると思います。

手法2-2については、実現ができれば、追加などの調整による利確で利益を出せそうです。

まとめ

私の考えた手法であれば、リスクはほぼなく、原資産価格が−7ドル下落のときに利確して約100ドルの利益、50ドル上昇で10,000ドル(100万円)の利益、そして、150ドルまで我慢ができれば約100,000ドル(1000万円)の利益という夢があるトレードができそうです。

本当に実現可能か、計算はあっているのかなどデモトレードで検証してみようと思います。

 

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