投資のテクニカル分析で、トレンド系の代表的なインジケーターに移動平均があります。他のインジケーターにも利用されることがあり、投資分析の基本として移動平均は必須です。種類も豊富ですので、それぞれの特徴や利用方法などを紹介します。
移動平均とは
時系列データにおいて、一定期間の値の平均をとり、平準化する技法です。
基本の例(3日間の移動平均
2020/1/5:1/5を含め3日間の値の合計(3+4+5=12)を3日間で割ると4になります。
2020/1/4:1/4を含め3日間の値の合計(2+3+4=9)を3日間で割ると3になります。
2020/1/3:1/3を含め3日間の値の合計(1+2+3=6)を3日間で割ると2になります。
2020/1/2:1/2を含め3日間の値がないため、算出不可能になります。
2020/1/1 | 2020/1/2 | 2020/1/3 | 2020/1/4 | 2020/1/5 | |
値 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
移動平均 | 2 | 3 | 4 |
代表的な移動平均
SMA(単純移動平均
一定の期間の平均を求めて並べたもの。単に移動平均といえば、この単純移動平均を指します。先程の基本の例もこの単純移動になります。
WMA(加重移動平均線
期近ほど加重をかけて移動平均にしたもの。加重は、値×n+値×(n-1)+値×(n-2)としている。
SMA(単純移動平均線)より動きが敏感で、相場のトレンドの転換を早めにキャッチします。その分、ダマシも多くなるので注意が必要です。
EMA(指数平滑移動平均線
SMAの欠点を補完しているというもの。市場価値の平均に近いと言われている。計算は難しい。
EMAもWMA同様に、SMA(単純移動平均線)より動きが敏感で、相場のトレンドの転換を早めにキャッチします。その分、ダマシも多くなるので注意が必要です。
チャートで3つの移動平均を比べる
今回は5日間で作成しました。
確かに、WMAとEMAはSMAより早くトレンドの天井と底をキャッチしているのがわかります。
このチャートを見る限り、WMAとEMAの方が優秀です。
WMAとEMAの差がほとんどありませんね。
その他の移動平均
DEMA(2重指数移動平均
EMA
EMAを元にしたインジケーターで、相場の動きに敏感で、相場のトレンドの転換を早めにキャッチします。その分、ダマシも多くなるので注意が必要です。
SMA、EMA、そしてこのDEMAをチャートで比べて見ました。
やはりSMAより早くトレンドをキャッチしていますが、EMAより早いかと言われると微妙な感じです。
EMAの動きを大きくしたような感じに見えますが、よーく見るとEMAが横ばいか少し上がっているときにWEMAが下がっている箇所も見受けられます。
TEMA(3重指数移動平均
EMA
DEMAの3重(トリプル)版ですね。
EMAを元にしたインジケーターで、相場の動きに敏感で、相場のトレンドの転換を早めにキャッチします。その分、ダマシも多くなるので注意が必要です。
SMA、EMA、DEMA、そしてこのTEMAをチャートで比べて見ました。
早くトレンドをキャッチしているのを見受けられます。
そして、SMA、EMA、DEMAなどに比べてダマシが少ないようにみえます。
HMA(ハル移動平均線
WMA
HMAは、WMAを元にしたインジケータです。
反応が非常に早いですが、SMAやEMAなどに比べて滑らかです。
SMA、WMA、そしてこのHMAをチャートで比べて見ました。
SMAよりも、そしてWMAよりも反応が早いかもしれませんね。
結構な頻度で、WMAが上がっているにも関わらず、HMAはトレンドに正確に下がっています。
ただし、ダマシに見えるものもあります。
LWMA(線形加重移動平均
あまり情報がありませんでした。そしてチャートも私が利用しているPythonのpytiでは正確な値が取れないようです。
SMMA(平滑移動平均
他の移動平均と異なり、反応を早めるのではなく、ダマシを減らすことを目的にしたインジケーターです。
SMA、WMA、そしてこのSMMAをチャートで比べて見ました。
滑らかというより少し反応がゆるいといった感じですね。
たしかに、ダマシが減っているようにも見えます。
TMA(三角移動平均
SMA
滑らかなラインが表示されるのが特徴で、これもSMMAと同様に、反応を早めるのではなく、ダマシを減らすことを目的にしたインジケーターです。
SMA、WMA、SMMA、そしてこのTMAをチャートで比べて見ました。
ダマシが減ったというより反応がかなり遅いですね。
同じダマシを減らす目的ならSMMAの方が優秀に見えます。
VAMA(出来高調整済み移動平均線
SMA
移動平均のインジケーターでは珍しく、出来高を含めた分析になります。
下の画面に出来高の棒グラフとともにVAMAを赤の折れ線グラフで表示させました。
計算式が、VAMA = SUM(終値 × 出来高比) ÷ 期間になっています。
グラフを見た感じは、なんとなく出来高の移動平均のようにも見えますね。
投資判断
基本(単線)
移動平均の基本的な投資判断は以下になります。
- 位置
- 移動平均より現在の値が上:買い
- 移動平均より現在の値が下:売り
- 傾き
- 移動平均線が上向き:上昇トレンド
- 移動平均線が下向き:下落トレンド
- グランビルの法則
- 買いサイン
移動平均線の向き 価格の動き 予兆 結果 下向き、または横ばい ー 価格が移動平均線を上に抜ける 上向き 価格が移動平均線を下に抜けた すぐに移動平均線の上に戻る 上向き 価格が移動平均線に上から接近 移動平均線を下に抜けず上昇する - 売りサイン
移動平均線の向き 価格の動き 予兆 結果 上向き、または横ばい ー 価格が移動平均線を下に抜ける 下向き 価格が移動平均線を上に抜けた すぐに移動平均線の下に戻る 下向き 価格が移動平均線に下から接近 移動平均線を上に抜けず下落する。
- 買いサイン
複数の移動平均線
複数の移動平均には、以下の2種類があります。
- 異なる期間かつ同一インジケーター:SMAなどで、短期と中期、長期など複数の期間で分析
- 同一期間かつ異なるインジケーター:同一期間で、SMAとWMAなど複数のインジケーターを組み合わせる。
複数の移動平均の判断
- クロス
- ゴールデン・クロス:短期(or EMA)が長期(or SMA)の上にクロスして抜ける:買い
- デッド・クロス:短期(or EMA)が長期(or SMA)の下にクロスして抜ける:売り
- 順番
- 上から短期(or EMA)、中期、長期(or SMA):上昇トレンド
- 上から長期(or SMA)、中期、短期(or EMA):下落トレンド
まとめ
使い古されたような印象がある移動平均ですが、改めて調べてみると、反応がいいものやダマシが少ないものもありましたね。
個人的にはTEMAとSMMAを見直したいと思います。
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