ショートストラングルとは
ショートストラングルのポジション
ショートストラングルは、売り(ショート)の合成ポジションになりますが、同一限月でアウトオブザマネーの権利行使価格のコールオプションとプットオプションの売りを同じ枚数のポジションを保有します。
- コールオプション:原資産価格より高い権利行使価格を売る
- プットオプション:原資産価格より安い権利行使価格を売る
オプションの売りは、利益限定、損失無限大になります。
権利行使価格はコールオプションとプットオプションのデルタがほぼ0になるようにします。
ショートストラングルとショートストラドルの違い
ショートストラングルとショートストラドルのポジションは以下のとおりです。
- ショートストラングル
- 同一限月でアウトオブザマネーの権利行使価格のコールオプションとプットオプションの売りを同じ枚数保有する。
- ショートストラドル
- 同一限月でアットザマネーの権利行使価格のコールオプションとプットオプションの売りを同じ枚数保有する。
ショートストラングルのメリット・デメリット
ショートストラングルのメリット
セータによるタイム・ディケイ(時間価値の減少)が味方になる。
オプションの買い戦略では、セータによるタイム・ディケイ(時間価値の減少)によって日々損失が拡大するので、時間との戦いになります。
しかし、ショートストラングルに限った話ではないですが。オプションの売り戦略は逆に、セータを味方につけて、タイム・ディケイによって利益を拡大させることになります。
原資産価格の多少の変動でも利益を生む。
単にオプションの売り戦略では、原資産価格の変動によって、セータ以上にオプション価格が上昇することがあり、損失が発生することがあります。
しかし、ショートストラングルのプットとコールの両建てによって、原資産価格の変動による損益は、どちらか一方に損失が発生しても、もう一方で利益を生むことになります。
原資産価格の変動の変動はプットとコールの両建てによりヘッジをかけて、セータの恩恵だけを受けることができます。
ショートストラドルに比べて、穏やかにトレードできる。
ショートストラドルのトレード手法であるアットザマネー付近のオプションは、セータが一番大きく利益が大きく時間価値の恩恵をもっとも受けることができます。しかし、原資産価格が少しでも上昇または下落すると、損失が発生するため、高度なテクニックを要します。
ショートストラングルの場合、ある程度のレンジ(幅)を取ったアウトオブザマネーでトレードしますので、原資産価格の多少の変動には耐えることができます。
ショートストラングルのデメリット(リスク)
原資産価格の上昇・下落に関係なく、過度な変動で損失が発生する。
単一のオプションの売り戦略では、原資産価格の上昇または下落のどちらか一方だけですが、ショートストラングルでは、上昇と下落の両方で損失が発生します。
ボラティリティー(IV)が高くなると損失が発生する。
ボラティリティ(IV)が高まると、オプション価格(プレミアム)が高くなります。
*この原理は以下を参照してください。
オプション取引の復習|オプション投資の基本
よって原資産が乱高下するような場面では、オプション価格(プレミアム)が高くなり、コールオプションとプットオプションの両方のポジションで損失が発生します。
ここが重要で、他のサイトではあまり触れられていない部分です。
これがなければ、ショートストラングルは聖杯のようなトレードになるのですが。。。
損失は無限大である。
オプションの売り戦略では、損失無限大になりますが、このショートストラングルも同様です。
しかも、上昇と下落の両方で損失無限大になります。
証拠金の額が大きく変動する可能性がある。
証拠金の額がいつ変動するのかわかりませんが、変動するそうです。
先物オプションの過去の変動を見つけることはできませんでしたが、先物の S&P 500 FUTURESが参考になるかも知れません。
S&P 500 FUTURESの証拠金
- 2014/1/2:$20,500
- ・・・
- 2018/1/2:$22,500
- ・・・
- 2018/2/9:$29,000
- ・・・
- 2020/1/2:$31,500
- 2020/1/9:$33,000
- 2020/3/2:$36,000
- 2020/3/4:$38,000
- 2020/3/10:$4,1750
- 2020/3/13:$45,000
- 2020/3/17:$53,000
- 2020/3/19:$60,000
- 2020/5/28:$60,000
上記は以下の取引所の本サイトより参照しました。
2020年の相場は波乱とはいえ、半年の間に約2倍になっています。
証拠金不足によるロスカットが発生する可能性があるため、資金には十分に余裕を持ったほうが良いでしょう。
ショートストラングルのデメリットの回避策
ボラティリティ(IV)の動向を見てトレードする
- ボラティリティ(IV)が高い:今後落ち着く(下がる)と判断
- ボラティリティ(IV)が低い:今後も落ち着いた(低い)状態が続くと判断
上記のどちらかの場合にトレードすることで、ベガが見方になり損失ではなく利益を生んでくれます。
要は、ショートストラングルはボラティリティ(IV)の投資とも言えます。
早めに手仕舞いする
本質的価値の損益の影響を受けない仕掛けた際の原資産価格あたりで手仕舞いするのが理想ですが、なかなか難しいと思います。
自分で決めた利益を確保できれば合成ポジションにて利確するのが懸命かも知れません。
オプションの最終決済日に近くなると流動性が下がるリスクがあるからです。
もちろん、ポジションのレンジ内で最終決済日を迎えられるなら問題ないのですが。
ショートストラングルのヘッジによる回避策と方法
原資産価格が保有しているオプションの権利行使価格を超えてきたら先物を買うまたは売ることによって、オプションの本質的価値をヘッジすることが可能になります。
- コールオプション:原資産の先物を買い
- プットオプション:原資産の先物を売り
先物でヘッジする枚数は、デルタニュートラルを取るようにします。その頃のオプションはアット・ザ・マネーになっていますので、デルタは0.5くらいになっていますので、オプション1枚に対し、先物はロットが1/10のミニなどを5枚にする必要があります。
ショートストラングルの投資対象の限月と権利行使価格
投資するタイミングはいつでも良いように思いますが、各々のトレードのスタイルによって変わると思います。
- 短期トレード(リスクは高いですが、比較的大きな利益をあげることができます。
- 限月:期近
- 権利行使価格:狭目
- 中長期トレード(リスクは比較的低くく、利益も少な目です。
- 限月:期先
- 権利行使価格:広目
参考:限月の違いによるセータの値
S&P500ミニのデータで、プットオプションのセータの値を比較しています。
20200918は残り29日です。
アット・ザ・マネー
限月別の原資産価格に原資産価格を合わせていますので、同等の比較ができています。
20200918 P -1.1078529208797394 20201218 P -0.7211086523350019 20200918 P None
20210319はなぜか取得できなかったのですが、傾向は見れると思います。
アウト・オブ・ザ・マネー
期近の原資産価格が約$3,380のときの、権利行使価格が$3,100のプットオプションです。
期先に関しては少し原資産価格が安いので、同等の比較になりませんが、目安になればと思います。
20200918 P -0.8945886482632486 20201218 P -0.746915744743594 20210319 P -0.5721255301165198
アット・ザ・マネーのオプションは、セータの特性の通り、満期が近づくにつれて大きくなっています。
参考:権利行使価格の違いによるセータの値
S&P500ミニのデータです。
期近(残り29日)の権利行使価格を比べました。
原資産価格より上はコール、下はプットオプションになっています。
なんとなく、5%くらいかなと思っていたのですが、3〜5%でも良いかも知れませんね。
特にコールオプションの差が激しいです。
参考:期近でのトレード
投資商品
- 金融商品:S&P500ミニオプション(ES)
- 原資産価格:$3,350
- 限月:20200918
- 権利行使価格
- コールオプション:$3,510($160下)
- プットオプション:$3,200($150上)
- 枚数:各1枚*ロット50倍
- 委託証拠金:おおむね$9,500 × 2 = $19,000(約200万円)
- ギリシャ指数
- コールオプション
- impliedVol=0.14681821275735424,
- delta=0.13610063628370128,
- pvDividend=0.0,
- gamma=0.0015707229846959614,
- vega=2.114134333589911,
- theta=-0.5204971181434894,
- プットオプション
- impliedVol=0.24570325900620063,
- delta=-0.24235376872439307,
- gamma=0.0013454408274390097,
- vega=2.895440962267756,
- theta=-1.248559499079225,
- コールオプション
投資の結果
トレード期間:約18時間(2020/8/20 17時頃〜2020/8/21 11時00分頃)
原資産価格:約$3,380(約$30上昇)
*実質損益にはIB証券の手数料を含んでいます。
- コールオプション
- 1枚あたりの損益:$9.4756 – $13.25 = -$3.7744
- 実質損益:-$191.16
- プットオプション
- 1枚あたりの損益:$34.7256 – $25.0 = $9.7256
- 実質損益: $483.84
- 合計
- 実質損益:$292.67999999999995(約3万円)
約200万円の委託証拠金にて、約18時間で約3万円の利益は悪くないかも知れません。
もう少しレンジを狭めると良いように思います。
これをデイトレするのか、期間を長めにして1週間などのスイングトレードにするのか、という感じでしょうか。
このように見ると、投資の聖杯のように思えますが、ボラティリティ(IV)のタイミングがたまたま良かっただけかもしれません。
ショートストラングルに向いている投資商品
ショートストラングルは、権利行使価格のレンジ内で原資産価格の変動してくれるのが理想なので、値動きが穏やかな原資産が良いですね。
株価指数
- 日経225
*私はIB証券でデータの購読をしていないため、シストレできません。 - ダウ30ミニ(YM)
- 単位:5倍
- 取引所:CBOT (ECBOT)
- S&P 500ミニ(ES)
- 単位:50倍
- 取引所:CME (GLOBEX)
- ナスダック100ミニ(NQ)
*たぶん、S&P 500ミニより値動きがある。- 単位:20倍
- 取引所:CME (GLOBEX)
- VIX(CBOE Volatility Index (VIX@))
*先物オプションではなく普通のオプションですが、限月があるので使えると思います。
*取引時間が短いという欠点があるかも。
*値動きが激しいから難しいかも。- 単位:1,000倍
FX
取引所:CME (GLOBEX)
*IBの証券ではすべて対ドルです。
- 円(JPY)
- 単位:12,500,000倍
- ユーロ(EUR@)
- 単位:125,000倍
- ポンド(GBP@)
- 単位:6,250倍?
- メキシコメソ(MXN@)
- 単位:500,000倍
- 南アフリカランド(ZAR@)
*IB証券では先物オプションの取扱がないので駄目ですね。 - トルコリラ
*IB証券ではFX自体の取扱がないようです。
コモディティ(商品)
- 原油(Light Sweet Crude Oil (CL@))
- 単位:1,000倍
- 取引所:New York Mercantile Exchange (NYMEX)
- とうもろこし(コーン)(ZC@)
- 単位:5,000倍
- 取引所:CBOT (ECBOT)
債権(国債)
- 米国10年国債(10 Year US Treasury Note (ZN@))
- 単位:1,000倍
- 取引所:ECBOT
金利
- フェデラルファンド(FF)金利|30 Day Federal Funds(30 Day Fed Funds (ZQ@))
- 単位:4167倍
- 取引所:ECBOT
取引所による限月の違い
取引所により、限月が定められているようです。トレーディングクラスによる違いもあります。
参考までに、現在の限月を以下にリストアップしました。
- CBOT (ECBOT)*ダウ30、とうもろこし(コーン)など
- ダウ30
- 年4回
[‘20200918’, ‘20201218’, ‘20210319’, ‘20210618’]
- 年4回
- とうもろこし(コーン)
- 毎月
[‘20200821’, ‘20200925’, ‘20201023’, ‘20201120’, ‘20201224’, ‘20210122’, ‘20210219’, ‘20210326’, ‘20210423’, ‘20210521’, ‘20210625’, ‘20210723’, ‘20210827’, ‘20210924’]
- 毎月
- 米国10年国債
- ほぼ毎月
[‘20200821’, ‘20200925’, ‘20201023’, ‘20201120’, ‘20201224’, ‘20210219’]
- ほぼ毎月
- フェデラルファンド(FF)金利|30 Day Federal Funds
- [‘20200831’, ‘20200930’, ‘20201030’, ‘20201130’, ‘20201231’,・・・]
- ダウ30
- CME (GLOBEX)*S&P500やナスダック、通貨など
- S&P500など
- 年4回
[‘20200918’, ‘20201218’, ‘20210319’, ‘20210618’]
- 年4回
- 通貨
- 毎月
[‘20200904’, ‘20201009’, ‘20201106’, ‘20201204’, ‘20210108’, ‘20210205’, ‘20210305’, ‘20210409’, ‘20210507’, ‘20210604’, ‘20210709’, ‘20210806’]
- 毎月
- S&P500など
- CBOE*VIX
- VIX
- 毎月
[‘20200825’, ‘20200901’, ‘20200908’, ‘20200915’, ‘20200922’, ‘20201020’, ‘20201117’, ‘20201215’, ‘20210119’, ‘20210216’]
- 毎月
- VIX
- New York Mercantile Exchange (NYMEX)*原油やガスなど
- 原油
- 毎月
[‘20200917’, ‘20201015’, ‘20201117’, ‘20201216’, ‘20210114’, ‘20210217’, ‘20210317’,・・・’20300516′, ‘20301115’]
- 毎月
- 原油
限月は、株価指数を除けば、ほぼ毎月あります。
ショートストラドルを短期トレードで狙う場合であっても、毎月チャンスを作れそうです。
複数の金融商品にわけて投資して、リスク分散を図ることもできそうです。
限月の日の違いを利用して、投資対象を分けるというのも一つの手だと思います。
たとえば、通貨[20200904] -> S&P500[20200918] -> とうもろこし[20200925]などと投資対象をローテーションしていくということできます。
取引所による取引時間の違い
取引所により、取引時間が定められています。
参考までに、現在のトレーディング時間を以下にリストアップしました。
時間は米国東部時間で、カッコ内は通常取引時間です。
- CBOT (ECBOT)
- ダウ30
- 00:00-15:15(08:30-15:15)
- 15:30-16:00(15:30-16:00)
- 17:00-23:59
- とうもろこし(コーン)
- 00:00-07:45
- 08:30-13:20(08:30-13:20)
- 19:00-23:59
- 米国10年国債、フェデラルファンド(FF)金利|30 Day Federal Fundsなど
- 00:00-16:00(08:30-16:00)
- 17:00-23:59
- ダウ30
- CME (GLOBEX)
- S&P500など
- 00:00-15:15(08:30-15:15)
- 15:30-16:00(15:30-16:00)
- 17:00-23:59
- 通貨
- 00:00-16:00(08:30-16:00)
- 17:00-23:59
- S&P500など
- CBOE
- VIX
- 02:00-08:15
- 08:30-15:15(08:30-15:15)
- VIX
- New York Mercantile Exchange (NYMEX)
- 原油
- 00:00-17:00(09:30-17:00)
- 18:00-23:59
- 原油
全て(VIX除く)の先物オプション取引は、ほとんど24時間取引可能ですが、ものにより通常取引時間外の場合は、取引が少なく、あまり値動きがないようです。
まとめ
先物オプションのショートストラングル戦略を用いれば、運用次第だが、リスクを最小に抑えつつ、利益を得ることができそうです。
投資対象はIB証券を利用すれば株価指数に限らず、通貨やコモディティのオプション取引も可能になりますので、投資方法も幅が広がります。
先物オプションのショートストラングル戦略のシストレを考えてみたいと思います。
ただし、ボラティリティ(IV)によるベガで損失が発生するリスクがありますので、そのあたりを考慮する必要があります。
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